「逮捕・勾留」に関するお役立ち情報
緊急逮捕の要件とその他の逮捕との違い
1 緊急逮捕とは
緊急逮捕については、刑事訴訟法第210条前段に定められています。
「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる」
これが緊急逮捕です。
2 緊急逮捕の要件
緊急逮捕は、裁判官が事前に発付する逮捕状なく被疑者の身柄を拘束することになりますので、厳しい要件が定められています。
⑴ 一定の重大犯罪であること
条文にあるように、「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪」であることが必要です。
ただ、長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪というのは、窃盗罪などでも該当するため、刑法に定められた罪は大半が該当し、暴行罪や脅迫罪などが緊急逮捕の対象から除外されることとなります。
⑵ 罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由あること
「充分な理由」とは、単なる疑い程度では足りず、強い嫌疑があることを言います。
これは、客観的な証拠や目撃者の証言などを参考に判断されます。
⑶ 急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないこと
逮捕状が出るのを待っていては、逃走されたり、証拠隠滅されてしまうなどの切迫した状態にあることが必要です。
⑷ 逮捕できる人物
緊急逮捕できるのは、検察官、検察事務官または司法警察職員に限られます。
⑸ 事後の逮捕状
緊急逮捕した場合、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続きをしなければなりません。
つまり、事後的とはいえ、逮捕状の発付が必要となります。
逮捕状が発せられないときには、直ちに被疑者を釈放しなければなりません。
3 他の逮捕との違い
⑴ 通常逮捕との違い
通常逮捕は、事前に裁判官が発付した逮捕状に基づき、逮捕手続きを行います。
そのため、通常逮捕と緊急逮捕の大きな違いは、事前の令状の有無です。
また、通常逮捕の場合は、罪を犯したと疑うに足りる「相当な理由」ですが、緊急逮捕の場合は、罪を犯したことを疑うに足りる「充分な理由」とされており、嫌疑の程度が異なります。
⑵ 現行犯逮捕との違い
現行犯逮捕は逮捕状なしで逮捕できますので、事後的にも逮捕状は必要ではありません。
事後とはいえ、逮捕状を必要とする緊急逮捕と逮捕状が不要な現行犯逮捕では、逮捕状の有無の点に違いがあります。
また、緊急逮捕の場合は、逮捕できる人物が検察官、検察事務官または司法警察職員に限られるのに対し、現行犯逮捕は「何人も」できる点で異なります。
現行犯逮捕は、現行犯人であることなどが要件となりますが、緊急逮捕の場合は現行犯である必要はありません。
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